一日目 奮闘! 百人一首大会

 

 やぁ、人間の皆さん。明けましておめでとうございます。“ゲゲゲの鬼太郎”です。
今年も僕たち、「妖怪横丁」の住民を温かく見守ってください。
 ところで、みんなさんは「百人一首カルタ」って、知っていますか?

 実はここ、「妖怪横丁」でも人間界と同じように、毎年この時期になると、「百人一首カルタ大会」が行われているんです。
でも、正直僕は、苦手なんです…。

 

*

 

鬼太郎:「今日もいい天気ですね、父さん。」
目玉おやじ:「そうじゃのォー。」
 と、そこへネコ娘が“第921回 百人一首カルタ大会”のことを知らせようと、鬼太郎の家にやってきました。
ネコ娘:「鬼太郎ーっ!!」
鬼太郎:「なんだい、ネコ娘?」
ネコ娘:「今度の日曜日に、“第921回 百人一首カルタ会”があるんだけど、一緒に参加しない?」
鬼太郎:「ムリだよ。上の句と下の句を覚えるのが難しいだもん…。」
ネコ娘:「鬼太郎なら大丈夫よ。だって、鬼太郎は、動きもすばやいし、記憶力もあるじゃない。」
目玉おやじ:「大丈夫じゃよ、わしが特訓してやるから。」
鬼太郎:「父さんまで…。じゃあ、頑張ってみます。」
ネコ娘:「鬼太郎、あ・り・が・と・う♡」
 そこへねずみ男が…
ねずみ男:「オレ様も鬼太郎ちゃんと参加しちゃおうかな~。」
ネコ娘:「バカね!あんたが鬼太郎と一緒に参加なんかしたら、
鬼太郎がかわいそうじゃない。ニャー!!」
ねずみ男:「チェッ、ヒリヒリしやがる。せっかく、鬼太郎と一緒に参加しようと思ったのに、ネコ娘のやつ、いきなりなんだよ…。」
目玉おやじ:「おい、ねずみ男。そういえば、カルタ会のチラシの中に“司会者には、賞金100万円”と書いてあったぞ。」
ねずみ男:「ホッ、ホントかよ、おやじ?ありがとよ~!!」
目玉おやじ:「あっ、ねずみ男、まだ話は…。」
ネコ娘:「さ、邪魔者もいなくなったみたいだし、砂かけばばあのところに行きましょ。」
鬼太郎:「う、うん。それにしても、ねずみ男はかわいそうだなァ…。」
ネコ娘:「なんか、言った?」
鬼太郎:「い、いや、何も言ってないよ。」
ネコ娘:「そう?」
鬼太郎:「そ、そんなことより早く行こ。」
ネコ娘:「そうね、早く行きましょ。」
砂かけばばあ:「おぉ、鬼太郎、来おったか。」
鬼太郎:「うん、今年は頑張ろうと思って。」  
目玉おやじ:「今年は、鬼太郎のチームが優勝じゃ!!」    
かわうそ:「鬼太郎は、誰と組むんだ?」

 

【メンバー表】
A 鬼太郎      ネコ娘
B 砂かけばばあ   子泣きじじい
C かわうそ     アマビエ

D 一反もめん    ぬりかべ
E  傘化け      ろくろ首

鬼太郎:「ネコ娘とだよ。」
かわうそ:「ふ~ん、そーかー。」
鬼太郎:「かわうそは?」
かわうそ:「オレか?オレは、アマビエと組むんだ。」
アマビエ:「アタイだよ。アタイと組むんだよ!!」
アマビエ:「アタイと組めば、絶対優勝だよ!!あんなチビネコには、負ける気もしないよ!!」
ネコ娘:「ちょっとぉー。それって、どういう意味ー!!」
砂かけばばあ:「これ、これ。そんなつまらんことでケンカせんで、カルタ会の練習を始めるぞ。」
ネコ娘:「絶対、負けないんだから!!さ、鬼太郎、やるわよー!!」
鬼太郎:「う、うん。」
 と、こんな調子で鬼太郎たちはた~くさん練習を積んで、鬼太郎は、グングンと上達していきました。
そして、大会当日…。
ねずみ男:「ただいまより、“第921回 百人一首カルタ会”を開催いたします。司会は、私、ねずみ男が担当させていただきます。」
鬼太郎:「ねずみ男のやつ、司会に募集したんですね、父さん。」
目玉おやじ:「・・・・・・・。」
鬼太郎:「あれ、父さん?」
ねずみ男:「まず、はじめの言葉をつるべ落としさんお願いします。」
つるべ落とし:「えー皆さん、いままで練習してきたことを十分に発揮し、カルタ大会を楽しんで下さい。」
ねずみ男:「つるべ落としさんありがとうございました。つづいて、ルール説明を小豆洗いさんお願いします。」
小豆洗い:「今から、ルールを説明します。下の句が覚えている妖怪は、返事をして取るか、下の句を言えれば、その妖怪の取り札となります。また、お手つきは一回休みとします。なお、読み札は読み手の二人に交互に読んでもらいます。審判は、主審が目玉おやじ、副審は横丁の新入りの毛目玉にやってもらいます。」
目玉おやじ:「わしのジャッチは厳しいぞ!!」
毛目玉:「みんな、よろしくな!!」
ねずみ男:「それでは、本大会メインの“カルタ会”を始めたいと思います。みなさん準備をして下さい。第1回戦は、Aチーム対Bチームです。」
鬼太郎:「そーか。父さんは審判だったのか。でも、2人ともこの姿じゃ、どっちが父さんで毛目玉なのか、全然分からないよ。」
ねずみ男:「それでは、第1回戦をはじめたいと思います。」
読み手A:「秋風に たなびく雲の 絶え間より…」
鬼太郎:「はい!」
目玉おやじ:「鬼太郎の取り札とする。」
ネコ娘:「すごいわ、鬼太郎。やるじゃなァい~。」
読み手B:「憂りける 人を初瀬の…」
子泣きじじい:「はげしかれとは 祈らぬものを。」
砂かけばばあ:「子泣き、お前、覚えとったのか。」
子泣きじじい:「わしだって、やるときはやるんじゃ!!」
砂かけばばあ:「見直したわい♡」
 鬼太郎のチームは、順調に札を重ねていき、ついには、決勝進出を果たしました。 
ねずみ男:「この大会もいよいよクライマックス!! 決勝戦は、鬼太郎率いるAチームと、ぬりかべ率いるDチームのガチンコ対決です。おおいにお楽しみください。では、読み手さん、句をどうぞ。」
読み手A:「さびしさに・・・」
一反もめん:「はいでごわす!!」
毛目玉:「一反もめん、お手つきで一回休み。」
一反もめん:「あっちゃァ~、やってしもうたばい。ごめん、ごめん。」
ぬりかべ:「一反もめん、大丈夫。オレ、頑張る。」
ネコ娘:「はい!」
目玉おやじ:「ネコ娘の取り札とする。」
ネコ娘:「やったニャァ~ン♡」
鬼太郎:「よかったね、ネコ娘。」
読み手B:「田子の浦に・・・」
鬼太郎:「富士の高嶺に 雪は降りつつ。」
目玉おやじ:「鬼太郎の取り札とする。」
読み手A:「なげきつつ・・・」
ぬりかべ:「いかに久しき ものとかは知る。」
かわうそ:「さすが決勝まで上がってきた2チームだぜ!!下の句を完全に覚えてる。な、アマビエ。」
アマビエ「そうだね。でも、ネコ娘に負けたのはくやしい~!!」
読み手B:「心あてに・・・」
一反もめん:「はいでごわす!!」
目玉おやじ:「一反もめんの取り札とする。」
一反もめん:「やったでごわす!!」
ぬりかべ:「その調子だよ、一反もめん!!」
一反もめん:「よぉ~し、いっぱい取ってやるでごわすよ~!!」
 それからもカルタ取りは続けられ、両チーム一歩もゆずらない白熱した戦いに!!
 果たして、その結果は…。
ねずみ男:「ピッ、ピー。試合終了!!それでは、結果発表をお歯黒べったりさんお願いします。」
お歯黒べったり:「今から、結果発表をします。」
ろくろく首:「ドキドキするわ~!!」
傘化け:「オレたちのチーム、何位だろう・・・。」
お歯黒べったり:「第5位Cチーム、第4位Eチーム、第3位Bチーム、第2位Aチーム、そして、注目の優勝チームは、Dチームとなりました。」
ネコ娘:「なによ、アマビエったら。“アタイと組めば、絶対優勝だよ!!”って言ってたのに、最下位じゃないァ~い(笑)。」
一反もめん:「やったでごわすよ、ぬりかべ。オイどんは今、すんごくうれしかばい!!」
ぬりかべ:「うれしいな!!」
砂かけばばあ:「惜しかったのォー。」
ねずみ男:「大会の主催者・油すましさんより、賞金50万円と餅、酒、野菜それぞれ1年分が2人に贈られます。」
子泣きじじい:「いやじゃ、いやじゃ。わしもあの酒がほしい!!」
砂かけばばあ:「泣くな、子泣き。泣いたら重いじゃろォがー!!」
油すまし:「あなたがたは、下の句をすべて覚え、優勝されたので、
これらを贈ります。平成20年1月20日 百人一首カルタ会主催者・ 油すまし。」
ねずみ男:「最後に、おわりの言葉を呼子さんお願いします。」
呼子:「みなさん、カルタ会は楽しんでくれましたか?今回優勝できなかったチームは、来年優勝できるように、頑張りましょう。これで“第921回 百人一首カルタ会”をおわります。」
 こうして、カルタ会は幕を閉じた。
鬼太郎:「今日は楽しかったですね、父さん。」
目玉おやじ:「そうじゃのォー。」
鬼太郎:「来年こそ、優勝してみせますよ!!」
目玉おやじ:「そのいきじゃ、鬼太郎!!」

 

~おしまい~

スマホからこんにちは!

荒木テルと申します。小説家志望の29歳です。

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03.12